2018年のスイス時計輸出

停滞傾向にありながらも明確な成長

 2018年のスイス時計輸出はほぼ予測通りの推移であった。年初からの安定したリズムは夏から経済基盤指数の停滞により陰りが見えたものの、納得できる範囲内におさまった。中国市場の停滞がこの傾向に拍車をかけたが、同時期に米国市場は明確な成長を見せた。マクロ経済、貿易、政治の不透明性の中で、時計産業の成長は足踏みし 、さらに他のラグジュアリー商品、コネクト(オンライン)商品との競合も厳しくなってきている。ディストリビューションの形態にも大きな変化が起こった年であった。

  2018年12か月間のスイス時計輸出額は212億フランであり、2017年に比べ6.3%の成長となった。特に前期は+10.6%と好調で、後期になって+2.3%と減速した。

  市場の閉塞感、経済指標と不透明性が多くのレベルで感じられ、2019年はあまり楽観的に見ない方が賢明 と思われる。スイス時計輸出は成長するものの、その成長幅は限られたものとなるだろう。

製品

 腕時計は金額でスイス時計輸出の95%を占めた。199億フランで、6.1%の成長となる。数量は逆に 2.3%の減少で2370万個であった。2017年に比べ57万個の減少に相当する。

  腕時計の数量の減少は特にクォーツ・ウォッチにおいて顕著で、5.0%の減少が見られた。ただし金額では4.2%増加している。機械式時計は金額でも+6.6%、数量でも+3.9%増加している。

  500フラン以下(輸出価格)の時計輸出は減少し、特に数量では5.0%減少した。この価格帯より上は全て増加しており、金額で7.5%、数量で8.1%の増加であった。

 貴金属、スチール、コンビネーションはいずれも金額でやや増加した。ウォッチの半分以上を占めるスチールは数量が4.3%増加した。一方、その他の素材カテゴリーでは数量で15.2%減少、その他の金属カテゴリーも12.2%減少した。

市場

 スイス時計輸出の増加は、主にアジア市場の成長によりもたらされている。一方、アメリカ大陸市場の成長と欧州市場の減少はほぼ同じレベルであった。アジア市場の売上はスイス時計輸出全体の53%を占め、12.2%増となっている。アメリカ大陸は+7.2%で米国をトップに全体の成長に大きく貢献し、スイス時計輸出全体の14%を占めている。欧州は2.9%の減少ではあるものの、全体の31%を占める重要な市場である。しかし2018年は成長に至らなかった。

 アジアの市場はいずれも好調に成長している。香港(+19.1%)はトップの座を占め、年間を通じて力強い成長を維持した。中国(+11.7%)は1月から減速が続き、年間の成長はやや低めに終わった。日本(+9.1%)は数年続いた減少から増加に転じ、夏にピークを記録した。シンガポール(+0.7%)と台湾(+0.8%)は安定を維持、韓国(+25.7%)は大きく成長した。米国(+8.2%)は3年間減少が続いていたが増加に転じ、2018年は加速を続けた。

 欧州では全般的に減少の傾向が見られた。イギリス(—4.4%)は春頃から停滞が続いた。南欧ではイタリア(—14.3%)とスペイン(—11.4%)が最も減少幅が大きい。一方、ドイツ(+4.3%)は安定した成長で推移し、フランス(+9.1%)は前期の再輸出が伸びたが、後半はほぼ現状維持にとどまった。

January 29, 2019